自動車の開発スケジュールとは?-ASからL/Oまでの流れを徹底解説

自動車業界・トヨタ

自動車メーカーの車両開発では、L/O(量産開始)をゴールに「いつ・何を・どのレベルまで確認するか」を段階的に区切って進めます。

こうした全体計画は一般に「(車両開発)大日程」と呼ばれ、自動車メーカーやサプライヤーの製造現場(工場)や生産技術が本格的に動き出すのは、L/O(ラインオフ)の約2年前からです。

この2年間は、単に自動車を作るだけでなく、「良品廉価(良いものを安く)」を実現するための作り込みの期間でもあります。

本記事ではそんな自動車の「開発スケジュール(開発イベント)」を、トヨタの例をもとに徹底解説します。

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トヨタ系メーカー勤務10年。設計開発5年+営業5年の経験をもとに、製造業・自動車業界の基礎知識やトヨタ流の考え方を、新人・若手向けに分かりやすく解説しています。

また、トヨタの各イベントである、AS・FS・CV・1A・量確・品確・L/Oにそれぞれ対応する、他OEMの開発スケジュールも巻末に合わせてまとめてありますので、こちらもご確認ください。

この記事でわかること
・トヨタの開発スケジュール・開発イベントの流れと、それぞれのポイント
・他OEMの開発スケジュール・開発イベント名

開発・設計

まずは、どのような車を作るのかというコンセプトを具現化し、図面や仕様を確定させていくステージです。

AS:量産開始の24カ月前

Advanced Stageの略です。

「AS」は開発の比較的初期段階にあたり、ここでは、新型車の基本性能やレイアウトを確認するための先行試作車が作られます。

既存のプラットフォーム(車台)を流用しながら新しい技術をテストするなど、機能面の成立性を検証する重要なステージです。

なお、ここでは試作品を使用します。場合によってはサプライヤーが確定しておらず、試作専門メーカーの部品が使用されることもあります。

FS:量産開始の18カ月前

Final Stageの略です。

「FS」はデザインや仕様の最終決定を行うステージで、ここでデザインフリーズが行われることが多く、これ以降の大きな変更はコストやスケジュールに甚大な影響を与えるため、非常に重要な判断ポイントとなります。

生産技術部門は、この段階で「このデザインは量産可能か?」を徹底的に検証します。

また、ここでも試作品を使用します。

生産準備・試作

仕様が固まると、実際に「形」にしていくステージに入ります。ここでは実験室レベルではなく、量産を意識した検証が始まります。

CV:量産開始の12カ月前

Confirmation Vehicleの略です。

「CV」は量産図面にかなり近い状態で性能確認車を作るステージで、この性能確認車を用いて、衝突安全テストや耐久テスト、走行性能の最終評価が行われます。

つまり、設計上の不具合(バグ)を出し切るのがCVのミッションとも言えます。

また、設備周りも簡易的なものから本番に近いものへとシフトし始め、この段階では本型品(量産と同一の金型を使用して作られた製品)を使用します。

量産トライ・最終確認

L/O目前のこの時期は、現場の緊張感が最高潮に達します。「作れるか」ではなく「高品質なものを、タクトタイム(決められた時間)通りに作り続けられるか」が問われます。

1A(1次号試):量産開始の6カ月前

「1A」は1回目の号口試作のことで、「1次号試」とも呼びます。

ここでは、自動車メーカーの量産ライン(実際の生産ライン)で組付けが行われ、「実際の設備や治具を使って組み立てられるか」や「作業員の動きに無理がないか」を確認します。

また、部品サプライヤーから納入される部品も、量産品と同等の品質が求められ、ここでは本型本工程品を使用します。

ポイント:
1Aでは、量産条件下での試作になるため、設計だけでは見えない「段取り・作業性」「金型の命数」「不良の発生方法」など、現場での問題が突如として現れます。

量確(MPT):量産開始の2カ月前

量産確認(Mass Production Trial)の略です。

立上げに向けて量産上の問題がないかを確認するステージで、1Aと同様に本型本工程品を使用し、自動車メーカーの量産ライン(実際の生産ライン)で組付けられます。

ここでは、実際の生産速度でラインを流し、設備が止まらないか、連続して生産しても品質が安定するかを確認します。

ポイント:
1Aよりも生産量を増やし、実際に長時間生産して問題がないかを確かめる「HVPT(High volume Production Trial)」として行われることが多いです。

品確(QCS):量産開始の1カ月前

品質確認(Quality Confirmation Stage)の略です。

立上げに向けて品質上の問題がないかを確認する、開発イベントの最終ステージで、1A・量確と同様に本型本工程品を使用し、自動車メーカーの量産ライン(実際の生産ライン)で組付けられます。

ここでは、立上げ前の最終的な品質監査を行い、塗装の肌艶、チリ(隙間)の精度、走行時の異音などを徹底的にチェックします。ここで合格印が出なければ、車を世に出すことはできません。

ポイント:
立上げ前の最後のチェックになるため、全ての項目が徹底的に確認されます。言い換えれば、最後の”関門”のようなステージです。

量産開始

L/O(SOP)

ここで晴れて量産開始です。完成車が組立ラインの最後を離れることを「ラインオフ」と言うことから、Line Offを略してL/Oと呼ばれています。

また、量産開始(Start Of Production)を略してSOPと呼ぶこともあります。

ポイント:
「開発車両」から「お客様の商品」へと変わる瞬間のため、工場では式典が行われ、関係者が一丸となって祝います。

まとめ:トヨタの「改善」の精神

今回解説をしたトヨタの開発イベントをガントチャートのようにプロットすると、以下のようになります。

トヨタの主要開発イベントである、AS・FS・CV・1A・量確・品確・L/Oをプロットした図(当サイト作成)

これらのトヨタの開発スケジュールで特徴的なのは、「いつまでに、何を保証するか」が明確であることです。

  • AS/FSで設計を固め、後工程での手戻りを防ぐ
  • CV/1Aで、モノとしての不具合を潰す
  • 量確/品確で、製造プロセスと品質を保証する

この徹底したステップこそが、世界中で信頼されるトヨタ品質の源泉となっているのです。

他OEMの開発ステージとの比較表

なお参考までですが、各自動車メーカーの開発イベントをまとめると以下のようになります。

イベント 24カ月前 18カ月前 12カ月前 6カ月前 2カ月前 1カ月前 量産開始
トヨタ AS FS CV 1A 量確 品確 L/O
ダイハツ – KS 号試先行 号試 量確 品確 L/O
ホンダ – – 段0 段確 品確 量確 量産
マツダ – メカプロ DCV TTO PP – MP0
スズキ – – 設試 生試 量試 パイロット SOP
日産 Dロット Cロット VC PT1 PT2 – SOP
BMW – – VS0 VS1 VS2 AP SOP
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