自動車業界における、生産計画の立て方は?-年計や内示に基づく需要予測から日次計画までの流れを徹底解説

生産管理

自動車業界では、「生産計画」は企業活動の要となる極めて重要なプロセスです。

この記事では、年計(年間計画)や内示(メーカーからの需給予測)に基づく需要予測の立て方から、週次・月次・日次に落とし込む生産計画策定の流れまで徹底的にわかりやすく解説します。

自動車業界で働く上で必ず必要になる基礎知識です。ぜひ参考にしてください。

自動車業界における生産計画とは?

生産計画とは、「いつ・どの製品を・どれだけ作るか」 を決めるための業務です。

自動車は部品点数が3万点ともいわれ、サプライチェーンが非常に複雑な産業です。

そのため、1つの車を製造するためには、サプライヤー・工場・組立ラインなど多くの組織が長期間にわたって計画的に動く必要があります。

特に自動車メーカーは、販売台数の予測が少しズレただけでも、

  • 生産ラインの過不足
  • 部品の欠品
  • 在庫過剰
  • 労務費のムダ

などの問題が生じるため、精度の高い生産計画 が求められます。

生産計画の全体像

自動車業界では、生産計画は次の階層で作成されます。

  • 年計(年間生産計画)
  • 中期計画(四半期・月次)
  • 週次計画・日次計画(実行計画)

それぞれの階層で使う情報も異なり、計画の精度も異なります。

以下では順を追って詳しく解説します。

年計(年間生産計画)とは?

年計(年間計画)は、メーカーが 1年間でどれだけの車を生産するかを決める最上位の計画 です。

販売部門が市場動向を分析し、ディーラーからの需要予測、過去の販売実績、経済情勢などを踏まえて作成します。

使用される主な情報

  • 市場需要・経済見通し
  • 販売会社(ディーラー)からの年次見込み
  • 新車モデルの投入スケジュール
  • 生産設備の稼働能力
  • サプライヤーの供給能力
  • 在庫政策(どれだけ在庫を持つか)

年計の特徴

精度は必ずしも高くない(半年~1年先は変動が大きい) が、設備投資や人員計画の基礎になるため非常に重要

年計が必要な理由

自動車は計画リードタイムが長く、サプライヤーも事前に設備投資や人員計画といった生産準備を整える必要があります。

そのため、メーカーは早い段階で年間の需要量を提示し、サプライヤーへ情報を共有します。

内示とは?

メーカーがサプライヤーに対し、「今後〇カ月間、これくらいの量を発注する予定です」と伝える情報を「内示」と呼びます。

これは契約ではありませんが、サプライヤーはこの情報をもとに、

  • 材料調達
  • 生産ラインの稼働計画
  • 人員配置 などを行います。

内示の期間

メーカーによりますが、一般的に 3〜6カ月先まで 情報が出されます。

内示の重要性

内示があることで、サプライヤー側は欠品を防ぎ、安定供給が可能になります。

逆に、内示が不正確だとサプライチェーン全体に負荷がかかります。

月次計画とは?

年計で定めた生産台数を、実際の販売状況に合わせて月単位で修正するのが月次計画です。

  • 市場動向
  • ディーラー注文
  • 生産能力
  • 在庫量

などを考慮して、月ごとの生産台数を決めます。

月次計画での調整内容

  • 需要が増えたら追加増産
  • 部品が不足しそうなら計画を後ろ倒し
  • 在庫が多い場合は生産を減らす
  • 新車の販売開始に合わせて生産を増やす

月次では、 戦略的なコントロールが最も大きく働くポイント といえます。

週次計画とは?

週次計画では、月次計画を踏まえて 1週間の生産順序や生産量を決定します。

自動車はグレード・カラー・仕様が多岐にわたるため、どの順番で生産するかも重要です。

週次計画での調整内容

  • 部品供給状況の最終確認
  • ラインの休止日・点検日などの反映
  • 生産負荷の平準化(ラインに偏りを出さない)
  • 色順序(塗装ラインの効率化)

週次計画が適切にできていないと、ラインにムダな負荷がかかり品質問題に直結することもあります。

日次計画とは?

日次計画(デイリー計画)は、工場が 1日あたり何台生産するか、どの順番で生産するか を決定する最終の実行計画です。

現場の作業者やライン監督者は、この日次計画をもとに生産します。

日次計画で考慮される事項

  • 当日の部品入荷状況
  • 生産ラインの稼働時間
  • 欠品の有無
  • 当日中の完成車出荷スケジュール
  • 工員の人数と熟練度
  • トラブル・不具合発生時の調整

最も短いスパンであり、変動に最も敏感な計画です。

まとめ

自動車業界における生産計画は、

  • 年計(年間計画)で大きな方向性を定め
  • 内示でサプライヤーに情報を共有し
  • 月次で現実的な計画に調整し
  • 週次で最終確認を行い
  • 日次で実際の製造工程を動かす

という 段階的で精密なプロセス によって構成されています。

まずこの全体像を理解し、日々の計画がどの階層の計画につながっているのか意識することで、スムーズに業務を把握できるようになります。

自動車業界は精度が求められる産業ですが、計画担当者はその中枢を担う重要なポジションです。

ぜひこの記事を参考に、生産計画の仕組みを理解していただけると幸いです。

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