「生産能力」と「工程能力」の違いは?意味・指標・活用例を徹底解説!

製造業

製造業の現場では、「生産能力」と「工程能力」という言葉が頻繁に使われます。

どちらも“モノづくりの力”を表す用語ですが、意味や使い方を混同しているケースも少なくありません。

この記事では、生産能力と工程能力の違いをわかりやすく解説し、実際の自動車業界における活用方法まで紹介します。

「生産能力」とは―工場全体の“アウトプット力”

● 定義

生産能力とは、一定期間内に工場や生産ラインが生み出せる製品の最大数量を指します。

つまり、「1日あたり○台の車を生産できる」「1時間あたり○個の部品を製造できる」といった総合的な生産量の上限を意味します。

● 自動車業界での例

トヨタのA工場の生産能力:1日あたり1,200台 部品メーカーのライン生産能力:月産50,000個

このように、生産能力は「工場単位」「ライン単位」「シフト単位」などで評価されることが多く、設備の稼働率や人員配置、シフト数によって変動します。

● 生産能力の主な要素

設備台数や生産ラインの数 稼働時間(シフト数) 作業者数・技能レベル 生産ロス(故障・段取り替え時間など)

「工程能力」とは―工程ごとの“ばらつきを抑える力”

● 定義

工程能力とは、各製造工程が製品の品質を安定して生産できる力を意味します。

統計的に見ると、工程能力指数(CpkやCp)によって評価されます。

● 工程能力指数(Cpk)の基本

Cpk = 1.33以上 → 安定して良品を生産できる工程 Cpk = 1.00未満 → 品質ばらつきが大きく改善が必要

つまり工程能力は、「量」ではなく「質」を表す指標です。

たとえば、あるプレス工程が寸法公差±0.05mm内に安定して収まるかどうかを確認する際に使われます。

● 自動車業界での重要性

自動車は数千点もの部品から構成されるため、1つの工程のばらつきが最終製品全体の品質に影響します。

そのため、自動車メーカーはサプライヤーに対しても「Cpk1.67以上」などの品質要件を求めることがあります。

生産能力と工程能力の違いをまとめて比較

項目 生産能力 工程能力
意味 生産量(どれだけ作れるか)を示す指標 品質の安定性(どれだけ精度良く作れるか)を示す指標
対象 工場全体・生産ライン単位 各工程・設備単位
主な指標 生産台数、稼働率、タクトタイムなど Cpk、Cp、ばらつき範囲など
目的 生産計画の立案、ライン設計、生産性評価 品質保証、工程改善、安定生産の実現
関連部署 生産管理部門、製造技術部門 品質保証部門、工程設計部門
重要な視点 「どれだけ多く・早く作れるか」 「どれだけ正確・安定して作れるか」

両者のバランスが自動車メーカーの競争力を決める

生産能力が高くても、工程能力が低ければ不良品が増え、コストが上がります。

逆に、工程能力が高くても生産能力が不足していれば、納期を守れません。

したがって、自動車業界では次のようなバランスの最適化が重要です。

高い生産能力 × 高い工程能力 → 高効率かつ高品質な生産体制 生産能力アップ時は、工程能力維持のための検証を必須にする 工程改善(カイゼン活動)でCpk向上を継続的に実施

この両輪をうまく回すことで、「安定した品質」と「短納期対応」を両立することができます。

まとめ|“どれだけ作れるか”と“どれだけ正確に作れるか”

生産能力=量の視点(スピード・規模) 工程能力=質の視点(精度・安定性)

自動車業界では、この2つを混同せず、正確に把握することが品質経営の第一歩です。

生産性改善を目指す際には、まず自社の「生産能力」と「工程能力」を数値化し、定期的にモニタリングしていきましょう。

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