「普通鋼」と「特殊鋼」の違いは?JIS規格から見る日本の製造業の基礎知識

材料

日本の製造業では、鋼材の選定が製品の品質を大きく左右します。

特に「普通鋼(一般鋼)」と「特殊鋼」は、どちらも鉄を主成分とする材料ですが、その成分・用途・規格には明確な違いがあります。

本記事では、JIS(日本産業規格)をもとに、両者の違いをわかりやすく解説します。

普通鋼とは?|JIS G 3101・G 3106などに基づく定義

「普通鋼(ordinary steel)」とは、主に炭素鋼のうち、特別な合金元素を添加しない一般的な鋼を指します。JISでは、以下のような規格が普通鋼を定義しています。

JIS G 3101:一般構造用圧延鋼材(SS材)

→ 例:SS400(建築構造、橋梁など)

JIS G 3106:溶接構造用圧延鋼材(SM材)

→ 例:SM490(船舶、建築物など)

普通鋼の特徴は、炭素含有量が0.02~0.25%程度で、機械的性質と加工性のバランスに優れていることです。

溶接や塑性加工が容易で、建築、造船、自動車、産業機械など幅広い用途に使用されます。

特殊鋼とは?|JIS G 4051・G 4053などに基づく定義

一方、「特殊鋼(special steel)」は、普通鋼にクロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、タングステンなどの合金元素を添加し、特定の性能(強度・耐摩耗性・耐熱性・耐食性など)を高めた鋼を指します。

代表的なJIS規格は以下の通りです。

JIS G 4051:機械構造用炭素鋼鋼材(SxxC材)

→ 例:S45C(機械軸、ギアなど)

JIS G 4105:クロム鋼鋼材(SCr材)

JIS G 4303:ステンレス鋼棒(SUS材)

特殊鋼は、特定の環境や用途で優れた性能を発揮します。

たとえば、ステンレス鋼(SUS304)は耐食性に優れ、食品機械や化学装置などに用いられます。

また、工具鋼(SK材)は硬度と耐摩耗性が高く、金型や切削工具に使用されます。

普通鋼と特殊鋼のポイント比較表

日本の製造業で用いられる普通鋼と特殊鋼を、JIS規格例・主成分・特徴・用途・価格の観点で比較しています。

項目 普通鋼 特殊鋼
JIS規格例 JIS G 3101(SS材:SS400)
JIS G 3106(SM材:SM490)
JIS G 4051(機械構造用炭素鋼:S45C)
JIS G 4303(ステンレス鋼棒:SUS)
主成分 炭素鋼(合金元素の添加は最小限) 炭素鋼に Ni / Cr / Mo / V / W などの合金元素を添加
特徴 加工性に優れており、コスパが良い 高強度・耐摩耗性・耐熱性・耐食性など、特性を付与
主な用途 建築・橋梁・造船・産業機械の一般構造部材 自動車部品・金型・工具・化学/食品装置など高機能部品
価格帯 比較的安価(汎用品) やや高価(付加価値が高い)

JIS規格から見た分類基準

JISにおいては、「普通鋼と特殊鋼の分類基準」は、添加元素の種類と含有量によって定義されます。

普通鋼:特殊元素(Ni、Cr、Mo、Vなど)を意図的に添加しない鋼

特殊鋼:上記元素を添加して、特定の性能を付与した鋼

つまり、JISでの定義上は、合金元素を添加するか否かが最大の分岐点です。

まとめ|JISに基づく正しい理解で最適な材料選定を

普通鋼と特殊鋼は、どちらも日本の製造業を支える重要な材料です。

JIS規格を理解することで、製品の品質管理や材料選定において技術的根拠を持った判断が可能になります。

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