【完全解説】JIS規格に基づく「普通鋼」とは?-種類・成分・用途を徹底解説

材料

普通鋼とは何か?

「普通鋼(ふつうこう)」とは、日本工業規格(JIS規格)によって分類された鉄鋼材料の一種で、特殊な合金元素を含まない一般的な炭素鋼(カーボンスチール)を指します。構造物や機械部品、橋梁、自動車など、あらゆる分野で使用される基礎的な材料です。

特殊鋼と比べて製造コストが低く、加工性や溶接性にも優れていることから、「一般構造用鋼材」として幅広く使われています。

普通鋼のJIS規格分類

普通鋼は、JIS(Japanese Industrial Standards:日本工業規格)によって用途ごとに細かく分類されています。主な規格は次の通りです。

規格記号 名称 主な用途
JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材(SS材) 橋梁、建築構造物、船舶、機械部品など
JIS G 3106 溶接構造用圧延鋼材(SM材) 建築や造船などの溶接構造物
JIS G 3131 熱間圧延軟鋼板(SPHC) 自動車部品、電気機器、圧力容器など
JIS G 3132 冷間圧延鋼板(SPCC) 家電、OA機器、車体外板など
JIS G 3113 熱間圧延鋼板(構造用) 建築・車両・産業機械の部材

これらはいずれも「普通鋼」に分類され、含有成分や用途に応じて記号(SS、SM、SPなど)が付けられています。

普通鋼の化学成分

普通鋼の主成分は以下のようになります。

  • 炭素(C):0.25%以下(強度と加工性のバランスを決定)
  • マンガン(Mn):1.6%以下(強度向上・脱酸作用)
  • ケイ素(Si):0.35%以下(強度・硬度を向上)
  • リン(P)・硫黄(S):微量(不純物としてできるだけ低減)

特殊鋼のようなクロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などはほとんど含まれません。

そのため、コストが安く、溶接性・延性に優れるのが特徴です。

普通鋼の種類と特徴

1. 構造用鋼(SS材・SM材)

建築構造や橋梁、船体などに使用される鋼材で、強度と靭性のバランスが重要です。

例:SS400(JIS G 3101)は代表的な普通鋼で、一般的な建築用鋼材として広く利用されています。

2. 薄板鋼(SPHC・SPCC)

自動車・家電・機械カバーなどに使われる鋼板。

SPHCは熱間圧延材、SPCCは冷間圧延材であり、加工性や表面仕上げの良さが求められます。

3. 鋼管・棒鋼類

パイプ・軸材などの用途に使われる普通鋼。加工しやすく、コスト面で優位です。

普通鋼の主な用途

普通鋼は「鉄の基本」とも呼べる材料で、以下のような用途があります。

  • 建築構造物(ビル、橋梁、鉄塔など)
  • 機械・産業設備(軸・フレーム・ブラケットなど)
  • 自動車部品・家電(ボディ、パネル、カバーなど)
  • 造船・プラント構造(フレーム、配管部材など)

これらの分野では、強度・溶接性・経済性のバランスが重視されるため、普通鋼が最適な選択肢となります。

普通鋼と特殊鋼の違い

項目 普通鋼 特殊鋼
主成分 炭素鋼 特殊元素を添加(Cr, Ni, Moなど)
強度・耐食性 標準レベル 高強度・高耐食性
コスト 安価 高価
用途 一般構造物・機械部品 工具・ベアリング・高温部材など

普通鋼は「汎用性・コスト重視」、特殊鋼は「性能重視」といえます。

まとめ

JIS規格に基づく普通鋼は、日本の産業を支える最も基本的な鉄鋼材料です。

強度、加工性、コストのバランスに優れ、建築から自動車、家電まで幅広い分野で活躍しています。

今後も環境対応や軽量化の流れの中で、普通鋼は改良されつつ、基礎素材としての地位を保ち続けるでしょう。

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