【保存版】JIS規格に基づく「特殊鋼」とは?-種類・特徴・用途をわかりやすく解説

材料

特殊鋼とは

特殊鋼(とくしゅこう)とは、一般的な炭素鋼に特定の元素(合金元素)を添加することで、強度・耐食性・耐熱性などの性能を高めた鋼材のことです。

日本では「JIS規格(日本産業規格)」により明確に分類されており、構造用合金鋼・工具鋼・ステンレス鋼などがその代表です。

通常の炭素鋼が「鉄+炭素」を基本とするのに対し、特殊鋼はさらにクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの元素を加えることで、使用環境に応じた特性を発揮します。

特殊鋼のJIS規格分類

JISでは、特殊鋼は大きく次のように分類されています。

分類 主なJIS記号 主な特徴
構造用合金鋼 JIS G 4053(SNCM、SCMなど) 強度・靭性に優れる。機械部品・シャフトなどに使用。
ばね鋼 JIS G 4801(SUPなど) 弾性限度が高く、スプリング材に使用。
軸受鋼 JIS G 4805(SUJなど) 高硬度・耐摩耗性に優れる。ベアリング用途。
工具鋼 JIS G 4401(SKH、SKDなど) 切削工具・金型に使われる高硬度鋼。
ステンレス鋼 JIS G 4303(SUSなど) 耐食性に優れ、食品・化学・建築用途に幅広く使用。
耐熱鋼 JIS G 4311(SUHなど) 高温下でも強度・酸化抵抗性を保持。

特殊鋼の代表的な種類と特徴

1. 構造用合金鋼(SCM、SNCMなど)

モリブデンやニッケルを添加し、強度・靭性・耐衝撃性を兼ね備えた鋼材。

自動車のギア、クランクシャフト、航空機部品などに使用されます。

2. ステンレス鋼(SUS系)

クロムを12%以上含有し、表面に酸化被膜を形成することで優れた耐食性を持つ。

SUS304、SUS316などは、食品機械・医療機器・建築外装に広く使われます。

3. 工具鋼(SKH、SKDなど)

焼入れ硬化性が高く、高温でも硬度を保持するのが特徴。

金型・ドリル・刃物など精密加工分野で欠かせない鋼種です。

特殊鋼の用途と産業分野

特殊鋼は、日本の製造業を支える高機能材料として多様な分野で使用されています。

  • 自動車産業:エンジン部品・トランスミッション・サスペンション部品
  • 航空・宇宙:ジェットエンジン部材・構造部品
  • エネルギー分野:火力発電タービン・原子力機器
  • 精密機器:金型・切削工具・ベアリング
  • 建築・プラント:配管・タンク・構造材

JIS規格に基づく材質記号の見方

JISでは、鋼材ごとに規定された材質記号が付与されます。

たとえば「SCM440」は次のように構成されます。

  • S:Steel(鋼)
  • C:Chrome(クロム)
  • M:Molybdenum(モリブデン)
  • 440:炭素量や機械的性質を示す番号

このように、記号を読むことで成分組成や用途を理解できます。

特殊鋼選定のポイント

用途に応じた特殊鋼を選ぶ際には、以下の点を考慮することが重要です。

  • 要求される機械的特性(強度・靭性・硬度など)
  • 使用環境(温度・湿度・腐食条件など)
  • 加工性・溶接性・熱処理性 コスト・入手性

設計段階で適切なJIS規格を選定することで、品質とコストの最適化が可能になります。

まとめ

JIS規格による特殊鋼の分類は、日本のものづくりを支える品質保証の基準です。

材料特性を理解し、適切な鋼種を選定することが、高性能な製品設計と長寿命化につながります。

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