はじめに
「普通鋼」は、鉄鋼生産量の約8割を占める最も身近な鉄材です。しかし、SS材、SM材、SP材など種類が多く、どれを選べば良いか迷うことも少なくありません。
ここでは、実務で頻出する主要な普通鋼を、JIS規格番号と特性に基づいて整理しました。

トヨタ系メーカー勤務10年。設計開発5年+営業5年の経験をもとに、製造業・自動車業界の基礎知識やトヨタ流の考え方を、新入社員の方々向けにも分かりやすく解説しています。
JISでは用途によって「普通鋼」と「特殊鋼」の大きく2つに分けられます。
本記事では、その中の「普通鋼」について解説をします。
普通鋼とは?
普通鋼(Ordinary Steel)とは、特殊な合金元素を含まない(あるいはごく微量な)鋼材を指します。
JISでは用途によって厳密に分類され、それぞれに「規格番号(JIS G 3xxx)」と「G+3から始まる番号」が割り振られています。
主な分類は以下の4つです。
- 一般構造用圧延鋼材(SS材)
- 溶接構造用圧延鋼材(SM材)
- 建築構造用圧延鋼材(SN材)
- 熱間・冷間圧延鋼板(SP材)
一般構造用圧延鋼材(SS材):JIS G 3101
一般構造用圧延鋼材(SS材)は、最も汎用性が高く、自動車部品のみならず、建設・土木・機械部品のベースプレートなど、あらゆる場所で使われています。
代表鋼種:SS400
鋼材名は以下のように読み解くことができます。
例)SS400
・Steel(鋼)
・Structure(構造)
・400(引張強さの下限値:400 N/mm²)
特徴:
炭素含有量については規定がなく、リン(P)と硫黄(S)の上限のみが定められています。
用途:
炭素量が一定ではなく、溶接時に硬化したり割れたりするリスクがあるため、溶接には不向きです。
また、焼入れによる硬化も期待できません。そのため、基本的にはそのまま(焼入れ・焼戻しを行わず)使用されます。
溶接構造用圧延鋼材(SM材):JIS G 3106
SS材の弱点である「溶接性」を保証した鋼材です。橋梁、船舶、高層ビルなど、溶接接合が前提となる重要な構造物に使用されます。
代表鋼種:SM400A・SM490A
鋼材名は以下のように読み解くことができます。
例)SM490A
・Steel(鋼)
・Marine(船舶・海事 ※転じて溶接用)
・490(引張強さの下限値:490 N/mm²)
・A(衝撃試験の等級:Aは規定なし、B・Cはシャルピー吸収エネルギーの規定あり)
特徴:
炭素(C)やシリコン(Si)、マンガン(Mn)などの含有量が厳密に規定されています。
建築構造用圧延鋼材(SN材):JIS G 3136
地震大国・日本において、耐震性を確保するために1994年に制定された、建築物に特化した鋼材です。
ビル、マンション、工場などの鉄骨造建物の骨組み(柱・梁)として使用されます。
代表鋼種:SN400B・SN490B
鋼材名は以下のように読み解くことができます。
例)SN400B
・Steel(鋼)
・New(新しい ※建築構造用)
・400(引張強さの下限値)
・B(衝撃試験の等級:Aは規定なし、B・Cはシャルピー吸収エネルギーの規定あり)
特徴:
鋼材が破断する前に「粘り強く変形する(塑性変形)」能力が保証されており、地震のエネルギーを吸収することができます。
熱間圧延軟鋼板(SPH材):JIS G 3131
名前の通り「加熱して板状に圧延された鋼材」です。
高温で圧延されて製造されるため、表面が黒い酸化皮膜(スケールと呼ばれる錆の一種)に覆われており、通称で「黒皮」や「ホット」とも呼ばれます。
代表鋼種:SPHC
鋼材名は以下のように読み解くことができます。
例)SPHC
・Steel(鋼)
・Plate(板)
・Hot(熱間圧延)
・Commercial(商業用=一般用)
特徴:
加工性は良いですが、表面精度は低いため、見栄えを気にしない裏側の部品や、後で厚く塗装する部分に使われます。
冷間圧延鋼板(SPC材):JIS G 3141
一方のこちらは、「熱間圧延された板を、常温でさらに圧延して仕上げた鋼材」です。
表面がつるつるして光沢があることから、通称で「コールド」や「ミガキ」とも呼ばれます。
代表鋼種:SPCC
鋼材名は以下のように読み解くことができます。
例)SPCC
・Steel(鋼)
・Plate(板)
・Cold(冷間圧延)
・Commercial(商業用=一般用)
特徴:
外観だけではなく、板厚の精度も非常に高いです。そのため、自動車のボディなど外から見える部分や、精密部品・ワッシャーなどに使われます。
まとめ:主要普通鋼の比較テーブル
今回解説をした4種類の「普通鋼」を、一覧にしてまとめると以下のようになります。
| 分類 | 記号 (代表例) | JIS規格番号 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 一般構造用圧延鋼材 | SS400 | G 3101 | 建築・土木 | 最も一般的で安価・溶接保証なし |
| 溶接構造用圧延鋼材 | SM490A | G 3106 | 橋梁・タンク | 化学成分規定あり・溶接性に優れる |
| 建築構造用圧延鋼材 | SN400B | G 3136 | 建築物の柱・梁 | 耐震性(塑性変形能力)に優れる |
| 熱間圧延軟鋼板 | SPHC | G 3131 | 外観性を求めない部品 | 表面が黒い(黒皮)・加工性が良い |
| 冷間圧延鋼板 | SPCC | G 3141 | 自動車のボデー・精密部品 | 表面が綺麗・寸法精度が高い |
↓JISに基づく「特殊鋼」の個別解説記事はこちら
↓JISに基づく「普通鋼」と「特殊鋼」の違いについて解説した記事はこちら



